前回拝命したとき、知恵を得た人類が楽園を追われる「失楽園」から、専門化しすぎた科学に対抗する新たな学際研究の挑戦として”Paradigms Lost”について書いてから12年たちました。人口に膾炙しながら実は当のトマス・クーンは撤回した用語「パラダイム転換」は安売りされています。しかし本当の問題はそれぞれの分野での標準的なパラダイムが変わることではなく、そもそも問題の本質に分野の枠組みを超えて取り組むこととこのユニットでは考えます。京大各部局を横断する研究組織として、「〜学」にこだわらず自由な発想で分野を超えた取り組みを目指すことでこのユニットは人類の生存を脅かす「持続可能性問題」に取り組んでいます。
パリ協定、原発事故、パンデミックと時代は変わりましたが、これらをある意味先回りしたこのユニットにとって問題の構造はこれまでの研究でかなり理解され、ユニットの緩い融合研究スタイルの有効性は、実証されてきたように思います。物質エネルギー循環や人類社会のレジリエンスと地球環境、成長経済の問題点は、今はやりの、2030年をターゲットとしたSDGsよりはるかに長い時間スコープと、人類活動の本質に根差した深い洞察、一方では身近で生活に直結した社会との接点での新しい研究を要求しています。
新たに装いを変えて出発した「研究連携基盤」の第II期の「未踏科学研究ユニット」事業においても、参加していただける皆さんの総意、特に若い世代、国際的なメンバーを巻き込みながら、失敗リスクや結果にこだわらないながらも人類の未来に直結し、社会実装を目指すユニット研究を展開してまいりたいと思います。
ユニット長 小西 哲之
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